前回(6月4日ニュージーランドの大仏様 ニュージーランドワイン)に、書きますとお約束した留学時の医学的な記事です。
すでに住職になってからの留学で、長い時間は寺を留守にはできません。このため、短期集中(短期決戦?日本人が得意ですね!)を目指しました。この間、栃木県藤岡町の矢田正幸師、母と家内が寺で頑張りました。
「白人に多いバレット癌の発生母地=バレット食道」の研究のために、留学(名誉客員教授)しました。この疾患は、学生時代(昭和50年1975年)の教科書を精読しても漠然としていました。留学当時(平成6年1994年)、教科書を読んでも組織像が確定していなかったのです。組織像の確定に一役買うことができたと自負しています。
この一連の疾患は、日本では少ないです。しかし、欧米ではとても高頻度です。多分、日本でも頻度が上がると考え、診断する力を上げるためと、原著論文を書くために出かけました。実際、前記の疾患の頻度は、日本で上がってきています。ギャンブルは一切しませんが、予想は的中!しました。
これらの疾患は「胃食道逆流症」が原因です。文字通り「胃液などが食道に逆流」するために発生します。胸やけや胸部の不快感が主な症状です。胸やけを感じる皆様は、内視鏡検査のできる医師を受診して下さい。適切な薬があります。「前かがみ」になると、症状が悪化したりすることがあります。何度も逆流を繰り返すと、食道が胃や腸のような粘膜(=バレット食道=前癌病変)となり、バレット癌が発生してきます。
ところで、大きな仏様の両脇の小さな仏様(脇侍)や弥勒菩薩様は前かがみですね。これらの仏様に参拝したあと、仏様を注視すると、必ずと言っていいほど「胃食道逆流症」を思い出しますね。このようなことを考えるのは、医師でも僧侶でも、私だけかな!と思い笑ってしまうことがあります。
留学が短期間であっても、論文を書こうと思っていました。雑事や観光はしませんでした。ホテルに居て、洗濯も自分でしませんでした。しかし、5カ月間に1報の原著と1報の症例報告論文を書いて帰国しました。その2論文は、他の医学者の書いた10論文の中で引用されています。留学により、少しだけですが、社会に有用な論文がかけたかな?!と思っています。その後、現在までに、前記の疾患に関しては20報以上の英語論文を発表して、すっかり得意分野(笑)になりました。
このため、何度もこの分野の講演者として招待されています。最近も、第97回日本消化器内視鏡学会(会長:昭和大学井上晴洋教授5月31日~)では、臨床医の発表に病理医としてコメント(意見や補足的な見解を加える)する役割でした。また、福岡(写真)での日本食道学会(会長:九州がんセンター藤也寸志院長6月6日~)の特別発言者(複数の講演をまとめる)に指名して頂きました。このところ、医学会での役割を楽しんでいます。
以下、留学中にお世話になったJass教授の記事のリンクです。
(https://fukushoji-horifune.net/blog/archives/699)