iPS細胞から薄い紙状の角膜を作り、ヒトに移植する治験(法律に基づき薬や器具を医療現場で使用することができるように安全を確かめる試験)が始まりました。
最近(8月29-30日)の新聞によりますと、iPS細胞(人工多能性幹細胞=いろいろな細胞・組織になることができます)と角膜移植の記事がありました。角膜は黒目(多くの日本人・アジア人の場合)の部分、茶色、ブルー、緑色に見える方もいます(以下角膜を「黒目」と書きます)。この部分をおおっている薄い皮膚の表皮のような構造です。黒目の涙に覆われていて、空気に接している部分とも言えます。表皮より、厚さがとても薄いために、光を通過させてレンズ(水晶体)経由で網膜に外の景色を映し出すことができます。
鏡で自分の角膜を見ると、表面はツルツルでなめらかです。角膜の細胞の再生が難しい状態(角膜上皮幹細胞疲弊症)の患者さんは、角膜の表面がデコボコとなり、目の前の景色が見えにくかったり、ほとんど見えません。荒廃した角膜に、iPS細胞から作られた角膜上皮を貼り付け、視力の回復をはかることが今回行われました(世界初!)。まだまだ、治験の段階です。
この疾患の国内での患者数は、年間数百人程度らしいです。現在までの治療は、亡くなった人からの角膜移植です。しかし、日本では角膜の提供者がとても不足しています。
厚生労働省の報告書(ごめんなさい!孫引きです)によると、角膜の病気全体で移植希望者は、今年3月現在1613人です。昨年度は角膜提供者ドナーが720人、移植手術は1155件が行われているそうです。まだまだ、角膜は不足しています。角膜は亡くなった人から移植を受けた異なる人の中で、2世代にわたって、とても長生きとなります。
以前、以下に釈尊と角膜移植について書きました。平成30年2018年2月16日「一眼を献ずるものは成仏できる 角膜移植」
https://fukushoji-horifune.net/blog/archives/1003
スリランカ人が献眼した角膜は、多くの日本人に移植されてきました。また、最近は、米国からもたくさんの献眼された角膜が来ています。日本人よりも、物質的に恵まれていなくても、スリランカの人々に尊敬の気持ちを持っています。発展途上国でも先進国でも、角膜移植が自国の人々からの角膜で行われています。日本でも全国の「アイバンク」に電話をしましたら、容易に献眼者となることを登録できます。