私が留学していた当時のオークランド大学病理学主任教授であったジャス教授(Jeremy R. Jass教授)の樹木葬を見て下さい。
ジャス教授は2008年に57歳で悪性膠芽腫(脳腫瘍)により亡くなりました。彼はロンドン大学卒業後、消化管病理学を学びました。1988年ニュージランドのオークランド大学教授(この時、私は名誉客員教授)、1996年オーストラリアの大学教授、2002年にはカナダの教授、そして2007年にロンドンに戻り、ロンドン大学教授として、St. Mark’s Hospitalに帰りました。この間、多くの日本人病理医や外科医を研究室に受け入れ、日本人医師と親密な関係を築きました。彼の人となりと業績はN. A. Shepherd教授によりJournal of Pathology (2009)にまとめられています。また、私も医学雑誌「病理と臨床」(文光堂、2016)に記事を書きました。 私は1994年にオークランド時代にジャス教授や夫人(Dr. Johanna Nixon、当時、オークランド病院病理部長)から、オークランド病院でバレット食道(白人に多い疾患)の生検(患者の身体から採取した組織)を(顕微鏡で)診る機会を与えられ、英語論文2報を作成して帰国しました。この後も、数回にわたり、国際病理アカデミー(カナダなど)の講師や、教科書の執筆者として推薦頂き、また教授夫妻が来日時には、京都の古寺や熱海温泉を案内する機会を得ました。
ところが、2007年に、世界の70人あまりの病理医のもとに、ジャス教授自身から電子メールが到着しました。「悪性膠芽腫になり2%が治癒する」とのメールでした。その後、訃報が到着しました。葬儀には生花を届けたものの、1度は墓参をしたいと念願していました。
2015年にヨーロッパ病理学会議がロンドンで開催され出かけました。夫人と7人の日本人と会食しました。そのおり、夫人から、多数の日本人医学者との交流から、ジャス教授は日本人の研究態度やアイデアから学ぶものが多かったと聞きました。
また、翌日には夫人とともに教授の墓地、ロンドンのGolders Green Crematorium and Mausoleumを訪れました。広い芝生の庭園と多数の石や樹木の墓がありました。
教授の墓は日本の桜の木の下にあり、1mほどの高さの日本のカエデ(モミジ?)の木でした。その木の前には、プレートがありました。「日本のカエデの木は、日本人医学者との長年の交流と美しい国と人々への感謝の証明である」と記されていました。桜の木の下の小川の近くで、日本のカエデの木を墓にすることにしたと夫人から聞きました。
皆様には、素晴らしい環境の樹木葬をご覧ください。まったく「商業主義」を感じません。写真中央やや左がカエデの木です。
根元に私が持参した花束があります。ホテルで墓参用の花束を作ってもらいました。日本の供花と異なりカラフルな花束でした。
プレートは花束のために写真では見えません。
ベンチ右は夫人です。Jass教授にまたあいたいですね!