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2022年1月24日

「老衰」とか「老衰死」とは何ですか?釈尊 涅槃

今回は死因に関する話題です。怖い話題?ではないです。

日本は本当に長寿社会です。百寿者(百歳以上の老人、百歳老人)は、8万6千人以上です。福性寺でも毎年のように百寿者の仏様があります。長命な方がなくなると「老衰」により亡くなった(老衰死)と聞きます。

老衰の状態、いまいちわかんないんですけど、どんなですか?」と町屋葬儀場で「故人の死因」について質問を頂きました。ホームページに書きますので、とお答えしました。

令和4年1月3日撮影 中央「延命招福地蔵尊」右「水子子育て地蔵尊」

令和4年1月3日撮影 中央「延命招福地蔵尊」(天和2年1682年 石井家建立)右「水子子育て地蔵尊」(昭和57年1982年建立)毎朝お参りの皆様がおいでです ベニキリシマツツジの葉は紅葉しています 一輪咲いている花がありました

老衰死とはどのようなものなのでしょうか。むかしの論文を読み直しました。私の恩師の一人である江崎行芳先生は「老衰死と言う言葉に科学的根拠がない」と以下の原著論文で書いています。なお、江崎先生には、福性寺の施餓鬼会で「健康長寿講演」をお願いしたことがあります。

江崎行芳、沢辺元司、新井冨生、松下哲、田久保海誉.「百寿者」の死因-病理解剖の立場から日本老年医学会誌1999年;36巻:116‐21ページ。私も共同著者です。

それでも、新聞などの報道の死亡記事のなかで、死因を「老衰のため」と書かれていることはまれではありません。

また、厚生省(平成7年)は、ほかに明らかな死因がなく、いわゆる自然死の場合には、老衰が死因の一つになりえます。死亡の原因となる傷病がなく、老齢などによる死亡と医学的に認められれば老衰と死亡診断書に記入して問題がない、と説明しています。海部俊樹元首相の死因も老衰でした(令和4年2022年1月15日亡)。最近、特に老衰死と言うことを多く聞きます。

それでは前記の江崎先生他の論文を紹介します。剖検(ぼうけん、病理解剖)の主たる目的の一つに死因の追及があります。百歳以上の老人(百寿者)の42人(男9女33)の解剖結果を報告しています。

解剖の結果、全例に死因がありました。敗血症38%(16人)、肺炎33%(14人)、誤嚥10%(4)、心不全10%(4)などです。敗血症の原因は、腎盂腎炎、胆道系の感染などです。肺炎の原因は、ほぼ全例が誤嚥(ごえん)です。悪性腫瘍は16人にありました。しかし、主要な死因とはなっていませんでした。癌で亡くなりたくなければ、百歳以上の長生きを達成することが必要です。ちょっと変ですかね?

百寿者の剖検結果からは、いかなる老人であろうとも、高齢であるがために自然死きたすものではなく、人は必ず病気によって亡くなることが明らかです。

百寿者では、「免疫機能の低下」と「嚥下喀出機能の低下」が際立って重要であり、前者は敗血症、後者は肺炎と窒息と深くかかわっています。これらを老衰と結びつけることは自然でしょう。しかし老衰が、直ちに老衰死につながるものではありません(江崎先生)。

高齢者・超高齢者であれば老衰によって亡くなってもよいとする考え方には、老人の病気を「歳のせい」として理解してしまう可能性を秘めていると思います。高齢であれば病気がなくても「自然死」すると説明することは、老人差別(エイジズム)へのつながりを感じさせます(江崎先生)。江崎先生!立派ですね。老年医学の基礎は江崎先生から教わりました。

エイジズム(Ageism・Agism)、老人差別・老人蔑視については、別に書きたいと思います。なお、仏教の世界でも四苦・老苦があります。

釈尊(お釈迦様、ブッダ)は80歳まで健康でした。鍛冶屋のチュンダの供養した食事(キノコ・豚肉)が身体にあわずに、亡くなります(涅槃)。もちろん老衰死ではありません。最後まで法(仏教)を説いています。若い皆様もお年寄りも、まだまだ学ぶべきことやするべきことが多いと思います。学びながら楽しく和気あいあいとして過ごしていきたいですね。

老衰を遅らせるために

令和3年2021年10月25日 住職にカウンターパンチ お骨になってほめられてもねー! https://fukushoji-horifune.net/blog/archives/10294

令和3年2021年4月27日健康長寿講演 「コロナ下での高齢者の生活 ―コロナ時代を生き抜くために―」井藤英喜先生 https://fukushoji-horifune.net/blog/archives/8798

平成元年2019年1月22日2回の追善供養法要 フレイル・サルコペニア?https://fukushoji-horifune.net/blog/archives/2529

解剖の種類、意義について

平成30年2018年12月23日原因不明の死「医学葬」すなわち「利他」 https://fukushoji-horifune.net/blog/archives/2216

平成30年2018年12月25日原因不明の死 正見(前回記事「医学葬」の続編) https://fukushoji-horifune.net/blog/archives/2230

 


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